1. 現代の葬儀事情
○亡くなった人との「別れのセレモニー」
「葬」という漢字は、草の間に死体をはさむことをあらわす象形文字で、草むらの中に死体を埋めることを意味しているとされる(新選漢和辞典・小学館)。古代から東洋では土に還すことで、人は自然に戻るといわれてきた。
残された人たちは、その人との生前の思い出や追慕の気持ちが自然とわきあがり、花を供え弔う儀式が生れる。生きている人と死んだ人との別れの区切りをつけるセレモニーが葬式である。
古くから庶民の葬儀は遺族の地縁によって行われ、村の長老が葬儀を取り仕切っていた。現在でも町内会などがお手伝いするのはそのなごりである。「家」中心の血縁のウエイトが高くなってきたのは明治以降。今では核家族化が進み、血縁が薄れていくと「家族」中心、あるいは地縁・血縁に代わって会社縁の葬儀が増えてきた。
○「かたち」を優先する葬儀業者
何度か葬式に参列した人は多いはずである。現在行われている葬儀の種類は仏式が九割以上を占め、そのため仏式の葬儀に参列することがほとんどで、葬儀全体のしくみがわからないまま、葬儀とはこんなものと思い込んでしまう。
しかし、身内からイザということになった場合、業者との慣れない「かたち」の打ち合わせで、遺族はただあわただしいだけの時が流れる。「人の接待だけに追われ、故人とゆっくりお別れができなかった」ということになってしまう。
ところで、国民生活白書によれば、最期を迎える場所は現在では八割近くが病院となった。葬儀も自宅から斎場で行うことが多くなり、特に核家族化が進む都市部では住宅事情からその傾向が強い。日常生活から、「死」の実感が遠ざかっている。
2. 広がる生前予約
○自分らしさを確実に実現
本人が生前に、葬儀会社と自分の葬儀内容と費用、その支払い方法を決め、契約を結んでおく方法はアメリカで起こった。日本でも「人生最後の儀式は自分らしくやりたい」「葬式のことで身内に迷惑をかけたくない」の風潮が反映し、90年に入って「生前予約」を導入する業者が出てきた。
生前に自分でこれらを遺言で決めていても、遺族がそれを守るとは限らない。自分で考えた葬儀を確実に実現させる方法が業者との生前契約である。この契約により、「簡素な葬式を」との遺言を守ったばかりに親戚から「葬儀代をケチった」と非難されることはない。
しかし、生前予約をする業者の選択は重要である。「葬儀の予約」とだけ勝手に理解する業者や、解約ができなくなっていたり、結果的に自分の意思が実現できない場合もある。業者選びのポイントは・葬儀の内容を詳細に決めてあるか・費用の支払いが明確で、葬儀後であるか・契約書になっているか・内容の変更が可能か、などがあげられる。
同時に、契約する本人も家族との話し合いをしているほうが望ましい。
[生前予約申込フォーム]
○自分らしく幕を引きたい
高齢化社会が進み、「死」をめぐる論議が盛んになってきた。ガン告知に始まり、ターミナルケア(終末医療)や延命治療などが医療分野だけでなく、社会問題として注目を集めている。死に至るまでの生き方や死生観の文学がベストセラーにもなり、個人の意識にも変化が出てきた。
葬儀の意味を問い、葬儀について考え直す風潮も強くなってきた。「かたち」だけが優先する葬儀とその不明朗な価格への不満が出てきた。少しでも故人らしさを演出したい。まったく付き合いのない僧侶に送られたくない。また本人も「自分の人生の終りは、自分らしく幕を引きたい」と考える人が多くなり、「自分らしい葬儀」に対する関心が高まっている。
○故人の遺志にそった葬儀を
故人の葬儀に対する考え方を反映した葬儀が増えている。もともと「希望があればどんな葬儀でも自由」であり、それをお手伝いするのが葬儀社の役目のはず。故人の遺志を尊重し、ご遺族の意向にそって葬儀の規模や予算、あるいは参列者の立場を考えて経験から助言するのがプロである。一部にはこの「葬儀の原点」に戻る努力を始めた業者も出てきた。
■クラシック・ギターの大好きだった父はギター仲間の演奏による音楽葬で、会葬者は親戚と親しい友人ばかり、献花と讃美歌合唱で見送った。
■「葬儀は四人の子供と孫たちだけで済ませてください」との遺言だったが、家族は出来るだけのことはしたいということで、数百人が参列しても見劣りしない部屋で菊の祭壇を左右にならべて七人だけで執り行った。
■生前予約をしていた通り、葬儀は身内だけの密葬、みなとみらい桟橋からクルーザーで相模湾洋上で「散骨」し、好きだったお茶を海に注いだ。
これらの例の他にも、「焼香のかわりに好きな花で献花」「大好きだったワインでパーティ形式のワイン葬」「用意されたチョコレートをひとりひとりつまんで柩の中に入れてお別れした」「生前の希望通り、孫のピアノ演奏をテープにして会場で流した」「生前にまとめた自分史の本を参列者全員に渡した」など故人の意志を尊重したユニークな演出が数多くなされている。また、生前にお世話になった人にご挨拶したいとして、ホテルで生前葬をした人もいる。
○生前予約と生前準備のポイント
<宗教>
自分が信じている宗教をはっきりさせておき、宗派と菩提寺を明記する。無宗教の場合は、「特定の宗派によらない葬儀」を意味し、できるだけ具体的に葬儀スタイルの希望を記入する。
<喪主>
喪主は戦後の民法改正で、「家の承継者の男子」である必要はなくなった。自分にとって大切な人を喪主に決めておく。といっても血縁あるいは配偶者がなることが多い。
<戒名>
戒名とは「仏の弟子の名前」であり、仏の弟子としてあの世に送ることを意味している。戒名不要の場合は、寺院の境内墓地には納骨できない場合がある。
<香典・供物>
辞退の場合は明記する。香典返しはせずに福祉施設や慈善団体へ寄付する場合もある。
<メッセージの用意>
身内だけの密葬の場合は自筆の挨拶状を用意する。遺言ノートに一人ひとりに宛ててメッセージを残すのも良い。
<写真>
祭壇に飾る写真は自分にとっても送る人にとっても大切なものです。その時のために好きな写真、その人らしさが出ている写真を準備するとよい。
<音楽・BGM>
式の前後に音楽を流すことが増えている。自分の好きな曲に送られて旅立ちたいからでしょう。事前に葬儀のBGMとして使う曲を選んでおくとよい。
[音楽葬でよく使われる曲]
<式場>
葬儀専門の斎場、ホテル、自宅、マンションの集会場など弔問に訪れる人や家族、近隣の人の負担など、それぞれ一長一短があるため場所を明確にする。「お世話になった近所の方に見送られたい」とマンションの集会場で葬儀を行ない、斎場のようにスペースがないためテント費用がかさんだが、それでも「お金の問題ではなく、故人の意志をあくまでも尊重できた」と満足された例もある。
<参列者>
死亡時に連絡する住所録を用意して、会葬者を明確にする。親族、友人、会社などに分類しておくと便利。
<形見わけ>
死後に残った物はゴミの山になりかねない。体力のあるうちに整理したいもの。家族に残すものや他人に形見わけする場合はリストを作成して保管場所を明らかにしておく。
<財産・預金>
財産相続の処理でトラブルが起きやすいもの。遺言で財産の一覧と保管場所を明らかにしておく必要がある。その時、借金、未払金や連帯保証人契約も明記しておく。死後には銀行の預金が封鎖されるため、ある程度の現金は用意しておくと迷惑がかからない。
<遺言>
遺言の種類には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三種類に分かれる。自筆証書遺言は全文と日付、署名を自筆で書き、印鑑を押す。お金がかからないが、信頼できる人に保管場所を知らせておく必要あり。封印されている場合は家庭裁判所で開封する。
公証人役場で二人以上の証人が立ち会い、遺言を口述して作成してもらうのが公正証書遺言。無効になる心配はないが、他人の前で話すので抵抗がある。そのために自筆で署名なつ印した遺言書を公証人役場に持参し、二人以上の証人前で封印する秘密証書遺言がある。
<臓器提供>
腎臓バンクやアイバンクに登録するかどうかを事前に決めて、提供の意思がある場合は意思確認書を作成するか、登録ししておく。
以上はすべて生前予約を行っている葬儀会社の担当アドバイザーが相談に応じてくれる。そのアドバイザーに意志を伝えて、内容を確認し、その実現のために色々と骨を折ってくれる。
3. イザという時の常識(1)
〈他人の不幸の場合〉
<危篤を知った>
1. 遠方から駆けつける
到着時刻を連絡、万一の場合に備え、喪服を持参(葬儀社も手配してくれ る)。
2. 自宅から駆けつける
地味な平服。アクセサリー類ははずす。喪服は避ける。
<訃報を知った>
3. 仕事先で訃報を知る
仕事着のまま、男性はネクタイと靴下を黒に替える。女性はアクセサリー をはずし、黒のストッキング、胸元は地味なスカーフでかくす。
4. 参列できない場合
喪主当てに弔電。特に親しい間柄は、代理人を立てて、通夜か告別式に参 列してもらい、後日改めて弔問。それもできない場合は、お悔やみの手紙 と現金書留の香典。
5. 慶事と重なった
弔辞を優先するが、親しい人の不幸でなければ、両方に出るようにする。
6. 後になって不幸をしる
知った時点で香典を持って弔問。遠方なら手紙を添えて香典を現金書留で。 密葬の場合はお悔やみの手紙を。
7. 故人が友人・知人
特に親しい間柄の場合、早く駆けつけて、手伝いを申し入れる。通夜と告 別式に参列。普通の付き合いならば、どちらかに参列。
8. 故人が友人・知人の親族
友人・知人と親しければ、通夜か告別式のどちらかに。
そうでない場合は参列する知人に香典を預けるか、現金書留で郵送。
9. 故人が近所の方
ごく親しい間柄の場合はすぐに駆けつけ、手伝いを申し入れる。さほど親しくない場合は玄関先でお悔やみを述べる。
<香典の常識>
(香典の表書き)
◆ 仏式
初七日まで「御霊前」 初七日から四十九日まで「御香典」 四十九日以降「御仏前」
◆ 神式
「御霊前」「玉串料」
◆ キリスト教式
ゆりの花と十字架の印刷した香典袋。表書きは「御花料」。 カトリックの場合は「御ミサ料」でも可。
◆ 二人で包む
中央に目上の人、もう一人を左側に
◆ 三人で包む
中央に目上の人、順に左側に
◆ 四人以上で包む
代表者を中央に、「外一同」を小さく左に、中包みに全員 の氏名を (注意事項) 香典に新札は入れない。新札の場合は折り目を入れる。
<供物・供花の常識>
【果 物】…派手な色のものは避ける。故人の好物なら可。
【菓 子】…日持ちをするものを
【生 花】…白ユリか白菊が一般的。派手な色は避ける。故人の好きな花は可。
【花 輪】…会社や公的な立場の人が贈るもの、個人は生花を。
・表書きは○○式の葬儀と花屋さんに伝える。水引をかける場合は表書きに「御霊前」。
・神式は作法が複雑、香典を包むのが無難
・キリスト教式の生花は祭壇に個人の意志で飾る場合が多く、世話役に相談。
・供物・供花をする場合は、香典は不要だが、地方によって違いあり。
・供物・供花は持参しても良いが、葬儀社が飾り付けを始める前に。
<式場での常識>
◆ 受付
コートをとって身だしなみを整える。挨拶して、香典を相手に正 面になるように差し出す。その後に記帳。
◆ 会場
先客に一礼してから入る。喪主か遺族にお悔やみのことばを。初 対面の場合は簡単に故人との間柄を。
◆ 線香
祭壇の前の座布団の手前の前で一度座り、祭壇に一礼してから座 布団に座る。線香に火をつけて消す時は手であおいで消す。後の 人のために奥から立てて、合掌。祭壇、遺族の順に一礼して席に。
◆ 焼香
五番目あたりからは焼香がとぎれないように焼香台に進む。自分 の次の人に黙礼して、祭壇の一歩手前で僧侶、遺族に一礼、祭壇
の前に立ち一礼、合掌。左手は合掌のままで右手の三本の指でつ まみ、目の高さで冥福を念じて、静かに香炉へ。その後、合掌、 一礼。左右どちらかに一歩ずれてから向きを変えて席に。
◆ 火葬場
車の手配のために、親族でないが火葬場に行く時は前日までに世 話役に連絡。
◆ 神式・玉串拝礼
遺族と神職に一礼して玉串を受取る。葉先を左手で下から支え、右手で枝を上から支えて、胸の位置に持ち、前に進み、少し手前 で小さく一礼、前に進み、玉串を時計回りに根元を霊前に向けて 供える。深く二礼の後、音は立てずにかしわ手を二度、二礼。三 歩下がって小さく一礼し、神職と遺族に一礼して席に。
◆ キリスト教・献花
花先を右手に下から支え、左手は茎を上から軽く持つ。祭壇に進んで一礼し、茎を祭壇に向けて献花台に捧げる。牧師/神父に 一礼して席に戻る。
<弔辞を頼まれたら>
弔辞を頼まれると、無地の便せんに清書して、「弔辞」と表書きした白封筒に入れて持参。司会者に指名されれば、祭壇の前ではっきりと朗読し、終わると便せんを封筒に戻し、祭壇に供える。「たびたび」「いよいよ」「重ね重ね」などの繰り返し言葉はタブー。また不幸が続くと嫌われるのが「続く」「追う」「再三」。
4. イザという時の常識(2)
〈身内に不幸の場合〉
<危篤>
◆ 自宅の場合
すぐに主治医に連絡。かかり付けの医者がいない場合や夜間・休日は119番で救急車の手配を。呼吸や意識など手短に病人の状態を説明する。
◆ 病院の場合
緊急時連絡先を用意しておき、自宅か病院か呼び寄せる場所
<臨終>
◆ 自宅の場合
すぐに主治医に連絡。かかり付けの医者がいない場合や夜間・休日は119番か警察の110番に連絡。蘇生の可能性もあり、また亡くなった場合は死亡診断書が必要になるため。緊急連絡リストから葬儀社に連絡。
◆ 病院の場合
医師から「ご臨終です」と伝えられ、死亡診断書が発行される。あらかじめ決めてある葬儀社に連絡。霊安室に移されて、死者の唇をガーゼで潤す「死に水」を血縁の濃い順にとる。
◆ 旅先の場合
病院の死亡診断書が必要で、その後葬儀社に連絡して、搬送を依頼する。
◆ 菩提寺がある場合
葬儀社ヘの連絡と同時に菩提寺に連絡
<搬送>
葬儀社が自宅か保管施設まで搬送してくれる。搬送先が遠方の場合など、病院紹介の葬儀社が搬送するケースもあるが、その後の通夜や葬儀を自動的に引き受ける決まりはない。
◆ 自宅の場合
ふとんを敷いて遺体を北枕に寝かせる。かけふとんはうす手のものを。神棚があれば半紙を張って封じる。仏壇の扉は閉じる。(浄土真宗は除く)
◆ 斎場や集会場の場合
業者に指示すればよい。
◆ 死亡届け
葬儀社が代行する場合が多いが、死亡診断書の片側が死亡届けに
<通夜・葬儀・告別式>
◆ 生前予約の場合
業者と通夜と葬儀の場所、日時をきめる。様式・金額はその確認だけ。
◆ 予約のない場合
業者と通夜と葬儀の場所、日時をきめる。予算を伝え、様式を打ち合わせ、祭壇の大きさや、斎場費用などの見積書を必ずとり、内容を吟味する。後でトラブルにならないように、きっちりとそれらを短期間にやる。
◆ 「通夜ぶるまい」
祭壇やテントの設営、通夜のお清めの会食の準備などは葬儀社が行う。
◆ 足腰の不自由な人
式場が畳の場合は、イスか正座用の座具を用意。
◆ お布施
僧侶に対しては葬儀後にまとめて渡す、市販の白封筒 「御布施」の表書き、その下に「〇〇家」と筆書き。
<葬儀費用>
「お葬式」平均381万円ナリという記事にびっくりされた方も多い。この金額がすべて葬儀会社に支払われるような印象をもたれるが、実はその内訳は大きく3つの項目に分かれている。
・葬儀会社への支払い(祭壇、棺、人件費など)
・料理屋への支払い(通夜ぶるまい、精進落としなど飲食接待)
・宗教関係者への支払い(読経や戒名へのお布施、式場費)
東京都生活文化局の平成8年3月の調査による平均額は・130万円・45万円 ・64万円となっており、その他経費(通夜返し等)の平均は51万円。因に、香典返しは平均約91万円と報告されている。
<支払時期>
当日支払い
お布施(初穂料)、式場費、火葬場控え室料・飲食費、心付け
後日支払い
葬儀会社への支払い(祭壇、棺、人件費など)
料理屋への支払い(通夜ぶるまい、精進落としなど飲食接待)
返礼品業者への支払い(通夜返し)
<支払方法>
現金
葬儀後に全額現金で支払う
葬儀費用保険
事前に加入し、死亡時に保険金で葬儀費用を支払う
葬儀ローン
簡単な手続きで、葬儀後に分割して葬儀費用を支払う
5. 葬儀で困った時のQ&A
Q.まず、遺族に何と言葉をかければいいのでしょうか?
「ご愁傷様でございます」あるいは「このたびは、突然のことで・・・・。心からお悔やみ申し上げます」が一般的です。頭を垂れ、声を低くして、「忌み言葉」を言わないように気をつけて、簡略に言葉をかけましょう。心をこめて言えば短い言葉でも気持ちは十分に伝わります。長い挨拶はいけません。
Q.電話での訃報場合のお悔やみをどんな言葉で表現すればいいですか?
病気なのか事故なのかなど亡くなりかたにもよりますが、「それは突然のことで・・・。びっくり致しました。なんと申し上げたらいいのか、言葉もないほどでございます」あるいは「思いがけないことで、さぞお力落としでございましょう。心からお悔やみ申し上げます「ご愁傷様でございます」などお悔やみの常套句を用いたほうが無難です。
Q.お悔やみの言葉への返事は?
「恐れいります」などと短い言葉で応えておけばいいでしょう。大勢から声がかかることになるため、一人ひとりにゆっくりと対応しようと思えば無理がでてきます。「お忙しい中、来てくださってありがとうこざいます」とわざわざ言う必要はありません。
Q.葬儀社を呼ぶ前に、決めなければならないことは?
1 お通夜・葬儀の形式(仏式・神式・キリスト式・無宗教式・その他)
2 場所(自宅でするか、集合住宅の集会所でするか、寺院の葬儀場でするか、葬儀会館でするかなど)の2点です。
1に関しては、家族が仏教であっても故人がキリスト教であった場合などは、できるだけ故人の信仰していた宗教によって行うようにしましょう。心のこもった葬儀にすることと、規模の大小やお金のかけ方とは無関係だということを踏まえて考えたいものです。
Q.通夜まで喪主がしなければならないことは?
葬儀社の人に相談しながら、遺族・親戚・会社関係などで重要な出席者の焼香の順番を決めなければなりません。これは、喪主の最も大切な役割の一つで、司会者に伝えなければなりません。そのためには、誰が出席しているのか把握する必要があります。
Q.戒名料と読経料の金額は?
日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」(平成7年)によると、戒名料と読経料の合計額として寺院にしはらった金額は以下のとおりです。
全国平均53万円、北海道41万円、東北74万円、関東A(茨城、栃木、群馬、千葉)41万円、関東B(東京、神奈川、埼玉)86万円、中部A(山梨・岐阜・長野・静岡・愛知)62万円、近畿53万円、中国35万円、九州39万円。
Q.無宗教式葬儀のポイントは?
自由な通夜や葬儀なのですから、進行に決まりはありません。しかし、最低限おさえた方がいいと思われるポイントは、
1 司会者が式の始まりと締めの挨拶を行うこと。
2 世話役代表(葬儀委員長)が告別の辞をのべること。
3 弔辞・弔電を披露すること。
4 焼香に代わる事柄(献花など)を用意すること。
5 遺族が会葬のお礼を言うことなどでしょう。
故人の好きだった歌手のCDを BGMに流す。会葬者全員で故人を偲ぶ歌を歌う、故人が生前に書いた自分史を披露するなど趣向を凝らした葬儀が、少しずつではありますが増えてきているようです。
Q.香典の返しをやめ、香典を今後の生活費にする場合の挨拶状は?
率直に、その旨を記すればいいのです。「本来ならばお香典返しをさせていただけなければならないところですが、日頃のご厚情に甘えて子どもたちの養育費に当てさせていただきます」で、いいでしょう。
Q.四十九日の法要は誰を招待すればよいか?
誰を招かなければならないという決まりはありません。しかし、仏教において死後7日毎に行なわれる法要を四十九日まで省略し、「この日の審判で死者の運命が決まる」とされている四十九日だけ省略せずに行うわけですから、遺族、近親者をはじめ故人の友人・知人、あるいは葬儀でお世話になった方々などをお誘いしたいものです。事前に法要を行う場所、人数などを確認し、寺院とは早めに連絡を取りましょう。
○臨終から法要までのスケジュール(仏式)
ご臨終
□病院での臨終の場合は、ご遺体を自宅などへ搬送
□葬儀社へ連絡(日時、式場、規模を決める)
□菩提寺の僧侶に葬儀を依頼
□親族、職場、友人などへ死亡の通知
□喪主を決める
□枕机を用意
□枕経をあげる
通夜の準備
□納棺、祭壇を整える
□死亡届け、火葬許可書の手続き
□通夜の席次を決める
□喪服、仕出し屋の手配
□弔問客の対応
通夜
□僧侶から仏名をいただく
□読経、焼香
□喪主の挨拶
□僧侶、弔問客に通夜ぶるまいをする
□お開きのあと、世話役と葬儀の打合わせ
葬儀・告別式
□会葬者の対応
□葬儀に出席
□告別式に出席、弔問客に挨拶
□出棺、喪主の挨拶
火葬・精進落し
□納めの式
□控え室で同行者をもてなす
□骨上げをする(埋葬許可書の交付)
□遺骨迎えの読経
□精進おとしのもてなし
□お開きの挨拶
葬儀後・法要
□世話人から葬儀事務の引き継ぎ
□葬儀社および各所へ支払い
□世話役、諸係、会社、隣近所へ挨拶
□初七日、四十九日の法要を行なう
□納骨(散骨)、埋葬をする
□忌明けの挨拶と香典返しをする
○主な宗教宗派の基礎知識
[宗教案内のページ]
○お布施の目安
種別 |
内容 |
金額(円) |
戒名 |
信士(信女) |
200,000~250,000 |
戒名 |
居士(大姉) |
350,000~450,000 |
戒名 |
院居士(院大姉) |
650,000~750,000 |
お経料 |
通夜・葬儀・繰上げ初七日 |
300,000~ |
お車代 |
導師一人につき |
5,000~10,000 |
お膳料 |
導師一人につき |
5,000~10,000 |
お席料 |
(法事の場合)栄西 |
30,000前後 |
式場使用料 |
通夜・葬儀・繰上げ初七日 |
250,000~ |
○戒名の格付け
戒名の格付け
戒名 | 読み方 | 戒名構成、(カッコ)は女性の場合 | 説明 |
院殿 | いんでん | 〇〇院殿××△△大居士(清大姉) | 最高の名称 |
院 | いん | 〇〇院××△△居士(大姉) | 院殿に次ぐ位の名称 |
居士 | こじ | ××△△居士(大姉) | 一般につけられる
最も多い戒名 |
信士 | しんじ | ××△△信士(信女) | 普通の社会人に対する位 |
童子 | どうじ | △△童子(童女) | 7~15歳くらいまでの子供 |
孩子 | がいじ | △△孩子(孩女) | 就学前の子供 |
嬰子 | ようじ | △△嬰子(嬰女) | 乳児 |
水子 | すいし | △△水子 | 流産、死産 |
宗旨によって戒名の呼が異なることは上記の通りです。浄土真宗では「法名」、日蓮宗では「法号」と呼んでいます。キリスト教では戒名はなく、故人が洗礼を受けていれば洗礼名姓名が墓に刻まれます。神道の場合も戒名はなく、姓名の下に男性は「命」、女性は「姫命」という敬称がつけられます。
6. 葬儀マナー事典
葬儀・法要を主宰、あるいは参列するにあたってのシキタリを分かりやすく整理しました。人生最期の儀式で恥をかかないために、ご活用ください。
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