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    3、焼香の作法(抹香・線香)



<現 状>
通夜では、僧侶の読経中に焼香するケースが多く見られます。焼香には、立礼の焼香、座礼の焼香がありますが、作法は少し異なります。
立 礼
立礼の場合、順番が来たらまず焼香台の前に進み、遺族と僧侶に一礼し、続いて身を正して頭を下げてご本尊に合掌拝礼します。そのあと焼香合掌し、最後にもう一度拝礼し、前向きのまま祭壇から2、3歩退いて元の席に戻ります。(但し縁台等の立礼では、2、3歩退く事はしません)
座 礼
座礼の場合にも腰をかがめて祭壇前にすすみます。喪主に一礼してから前に進み、祭壇に向かって頭をさげます。次に膝で前へ進み遺影に向かって合掌してから抹香を右手に取り焼香します。そのあと再度合掌し、喪主に一礼して立ち上がってから退きます。
回し焼香
式場が狭い時には、香と香炉を盆に乗せて回し焼香を行ないます。この時、本尊の方角に礼をし、香をつまんで焼香を行ない合掌礼拝して、隣の人に回します。
宗派による違い
焼香回数は宗派で規定しているところがあります。真言宗では焼香3回、線香も3本立てます。
身・口・意の三業を清めるのがその理由です。 真宗大谷派では焼香は2回、浄土真宗本願寺派では1回、お線香は立てないで折って寝かせます。
また真宗では、焼香に際して香を額におし戴きません。曹洞宗では焼香は2回、線香は1本です。
線香での焼香のしかた(座礼)
線香のあげ方は宗派によって違います。長いまま1本をあげる臨済宗、離して3本の真言宗、折って寝かせるのが浄土真宗や日蓮宗です。
焼香の際には、霊前まで進みます。そして喪主に一礼をして、祭壇に向かって合掌をします。このあと、線香を取りローソクで火をつけます。このとき炎は手であおいで消します。息をふきかけて消すのは禁物です。そして線香を香炉に立てます。ここでもう一度合掌してから、そのまま後ろにさがります。最後に遺族に一礼をして、自席にもどります。
神式(玉串奉奠の仕方)
神事で行う「玉串奉奠」は、仏式の焼香にあたるものといってよいでしょう。玉串とは榊の小枝に紙垂(しで)をつけたものです。
玉串奉奠とは、玉串に自分の心をのせ、神にささげるという意味がこめられています。
■玉串のささげかた
神職の前に並んで順番を待ちます。自分の番がきたら、神職および遺族に一礼してから、玉串を両手で受け取ります。このとき玉串は右が枝元、左に葉がくるように渡されますから、右手の親指を下にし、左手で支えるように受け、枝元が胸の高さになるようにやや持ち上げて一礼します。次に祭壇前にすすんで玉串案に供えます。
(1)やや手前で一礼します。
(2)左手で葉の部分を支えながら、右の手のひらを返し、玉串を半回転させます。
(3)枝元を祭壇に向けて玉串案に供えます。
(4)遺影を仰いで深く二礼し、2回しのび手でかしわ手を打って一礼し、2、3歩後ずさりします。
(5)向きを変えて神職と遺族に会釈し、自席にもどります。 
キリスト教式(献花の仕方)
キリスト教式による通夜や葬儀では、献花が行われます。このしきたりは、本来、キリスト教の儀礼にはないものでしたが、いわば仏式の焼香に代わるものとして、祭壇の前に1人1人が花をささげるという行為が生まれました。献花によく用いられる花はキクやカーネーションです。
■献花台への供えかた
自分の番がきたら、花を一輪受け取ります。花が右、茎元が左にくるように渡されますから、両手で花を持ちます。そして献花台の前に進み、花が手前になるように持ち直し、献花台に供えます。そのまま1、2歩さがり深く一礼し、司式者(神父か牧師)、家族に一礼してもどります。
キリスト教の信者の人は、胸元で十字を切ったり、両手を組み合わせてお祈りをささげますが、一般の人にはその必要はありません。
 
いわれ
焼香は仏教儀礼につきもので、釈尊在世当時から行なわれていました。日本には、推古天皇(628没)の御世に淡路島に香木が漂着したと『日本書紀』に記されています。唐の鑑真和尚(753来朝)が仏典とともに、香木を携えてきたというのが香流行のはしりといえます。香は特に夏など部屋の臭気を消すために用いましたが、神仏の食料ともいわれ、高価なために珍重されました。

 


葬儀のしきたり
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