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    9、北枕と枕飾り



<現 状>
病院から自宅に遺体をお運びしたら、布団に寝かせます。敷ぶとんは一枚、その上にシーツをかけ、掛けぶとんは一枚にします。安置する場所は仏間あるいは座敷で、故人の頭を北に向けて安置します。
この時、故人の身体にドライアイスを目立たないように使用いたします。顔には白布をかけ、両手を胸の当たりで合掌させ、手には数珠をもたせます。事情によって北枕に出来ないときには、西枕にします。
枕飾り
遺体を安置したあとには「枕飾り」を準備します。故人の枕元に、白布をかけた小机を置きます。
その上に
(1)ローソク立て、
(2)香炉、
(3)花立ての三具足の他、
(4)鈴(りん)
を用意して下さい。花立にはシキミを飾ります。これを俗に「一本花」ともいいます。
そして線香立てやローソク立てには、それぞれ線香、ローソクを立てて火をつけます。
線香とローソクは消えないように、遺族の人が交替で見守っていてください。
※浄土真宗では水の中にシキミ一枚、あるいは花びら一枚を浮かべることがあります。
枕飯、枕団子、守り刀
「枕飯」は故人の使った茶碗を用意しご飯を山盛りにし、その上に箸を一本を立ててお供えします。
「枕団子」は六個の団子を作って白紙を敷いた三方に供えます。
また故人の枕元か胸の上に、葬儀社で用意した「守り刀」を置きます。

 神式の枕飾り
遺体を北向きに寝かせ、案(台)とよぶ白木の八足の上に三方を置き、そこに洗米、塩、水、お神酒を器に入れて供えます。
三方の左右には真榊、ローソクを置きます。

キリスト教式の枕飾り
キリスト教では本来、枕飾りの習慣はありませんでしたが、台の上に十字架、聖書、生花を飾り、ローソクの火を絶やさないようにすることが多いようです。
北枕のいわれ
仏典『涅槃経』に、
「その時世尊は右脇を下にして、頭を北方にして枕し、足は南方を指す。面は西方に向かい」
とあるように、釈尊が入滅されたとき、頭を北にし顔を西に向けられた姿を故事に由来します。
この頭北面西は古くから伝わっており、法然上人の伝記のなかにも、「建暦二年、正月二十五日遷化。…頭北面西にしてねぶるがごとくにしておわり給いにけり」とあります。
枕飾りのいわれ
枕飾りのローソクの光は仏の光明を意味し、線香の煙は仏の食物を意味しています。又灯りは死者が迷わないように道を照らすという意味があります。
「一本花」に用いるシキミは、神の意志の先触れをするとされる木で、その実が毒のため、「あしき実」からシキミと呼ばれるようになったといわれています。大変に生命力の強い木で、魔除けにもなるので昔から墓などにも植えられました。
「枕飯」は、食物が肉体を養うならば、魂も養うという考えから、魂の形である丸形にして供えます。これは死者の依代(よりしろ)と考えられています。
「枕団子」は、釈迦が入滅したときに無辺身菩薩が香飯を捧げた故事に基づいています。また地域によっては、死んでから善光寺に行くための弁当という信仰があります。
枕団子の数は六個が多く、これは六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の六世界)を巡る象徴で、六文銭を死者が身につけていくのも同じ考えの現われです。
「守り刀」は邪霊を払うために用いると言われています。また武士が死んだとき、枕元に刀を置いた名残りともいわれています。
枕団子の作り方(11個の場合)
上新粉(米の粉)をぬるま湯でかためによく練ります。
(1) 直径3センチくらいの団子を11個作ります。
(2)小皿を用意します。
(3)皿の真ん中に一個置き、その回りに6個置きます。
(4)7個の上に3個置きます。
(5)1番上に1個置きます。
(6)5分程度蒸して完成です。
※浄土真宗ではお供えしません。

 


葬儀のしきたり
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